ゼロから始める5アウトオフェンス④
【エルトラックが教える】 コーディネーショントレーニング
今回の記事では、「コーディネーション」についてお伝えしていきます。
みなさん、このように感じたことはありませんか?
①一生懸命に長い時間練習しているのに、上手くならない。
② 上手な人やコーチの真似をしているつもりなのに、同じようにならない。
③一人だと上手く行くのに、試合で相手がいると同じようにできない。
原因としていろんなことが考えられますが、これらは「運動能力」が大きく関わっています。より具体的に説明すると、「自分が思った通りに体を動かせていない」ということです。
このような問題を解決するのが、「コーディネーショントレーニング」です。コーディネーションとは、「自分が思った通りに体を動かす能力」と定義しています。
コーディネーション能力を獲得することで、三つのメリットがあります。
①自分の体を自分のイメージ通りに動かせるようになることです。
②危険に対する回避能力が上がるためにケガをしにくくなります。
③トレーナビリティが高くなることで、新しい技術を覚えるまでの時間が短縮できるようになります。
コーディネーション能力がないと、①~③に関して課題を感じてしまい、試合でのパフォーマンスに悪影響を起こしてしまうということです。コーディネーション能力は、バスケットでいうドリブルやシュートなど、目に見えて成果を感じることが難しいため、重要性を感じない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
この機会にコーディネーションの理論を改めて整理して、今後の練習に活かしていただきたいと思います。
この記事の目次
人間の体が持っている二つの能力
我々は、人間の体が持っている能力を二つに分けて整理しています。
一つ目は、「身体能力」で、個々のプレーヤーの身長、体重、手脚の長さなどの体格、瞬発力を発揮したり姿勢を維持するための筋力、
持久力の基となる心肺機能を意味します。例えば、足の速さ、跳躍力、持久力、アジリティなどです。二つ目は、「運動能力」です。
主に「コーディネーション能力」を意味しています。「コーディネーション」とは、「自分の体を思った通りに動かすことができる能力」とも言い換えることができ、
「バランス能力、識別能力、定位能力、反応能力、リズム能力、連結能力、変換能力」の七つに大きく分類できます。
コーディネーションが必要なわけ
コーディネーション能力を獲得することで、三つのメリットがあります。
①自分の体を自分のイメージ通りに動かせるようになること。
②危険に対する回避能力が上がるためにケガをしにくくなります。
③トレーナビリティが高くなることで、新しい技術を覚えるまでの時間が短縮できるようになります。
コーディネーション能力を不足していると、急な環境の変化に対応できず、トラベリングやパスミスなどのターンオーバーをしてしまったり、技術を覚えたり、動作の改善に時間がかかってしまいます。
「スキャモンの成長曲線」
「スキャモンの成長曲線」をご存知でしょうか?
人間が生まれてから大人になるまでの発育量を示したものです。この図から分かるように、8~10歳ごろに神経系は成熟期までの90%、12歳ごろにかけて100%に達します。
神経系の発達時期に、神経回路にあらゆる刺激を入れることが重要だと言えます。
神経系の発達し、子供の身体能力、運動能力が著しく発達する時期のことを「ゴールデンエイジ」と言います。 具体的には5~12歳(年長~小学6年生)の期間のことを言い、体の動かし方、動作、技術を短時間で覚えることができる年代です。
また、4~8歳頃に神経系が急激な成長を迎える時期を「プレゴールデンエイジ」と言い、13~15歳ごろに体格が大きく変わり始める時期を「ポストゴールデンエイジ」と言います。
この時期に神経回路に刺激を与え、その回路を幾重にも張り巡らせるためにも多種多様な動きを経験させることが、とても大切なことです。
7つのコーディネーショントレーニング
コーディネーション能力の要素となる7つの能力を磨けば、自分の体を思い通りに動かせ、ドリブル・パス・シュートなど最大限に発揮できるようになります。
①「バランス能力」とは、運動の基礎であり、土台となる能力のことです。走っていて、突然止まる時などに必要な能力です。
②「反応能力」とは、ひとつないし複数の合図を素早く察知し、適時にそして適切な速度によって、合図に対する正確な対応動作を可能とする能力のことです。突然飛んできたできたチャンスにパスを出すときなどに必要な能力です。
③「リズム能力」とは、ひとつは耳による音や音楽、あるいは真似をするときの目からの情報を、動きによって表現することを可能とする能力のことです。相手のレイアップシュートをタイミング良くブロックするときなどに必要な能力です。
④「定位能力」とは、決められた場所や動いている味方・相手・ボールなどと関連づけながら、動きの変化を調節することを可能とする能力のことです。速攻などで前を走る味方にパスを出すときなどに必要な能力です。
⑤「識別能力」とは、手や足、頭部の動きを微調節する際の視覚との関係を高め、ボールやハンドルなど用具操作を精密に行うことを可能とする能力のことです。適切な力でパスを出すときに必要な能力です。
⑥「連結能力」とは、からだの関節や筋肉の動きを、タイミングよく無駄なく同調させる能力のことです。ドリブルとは違うタイミングでステップするときに使われる能力です。
⑦「変換能力」とは、急に状況が変わり違う動きをしなければならなくなったとき、条件にあった動作の素早い切替を可能とする能力のことです。ドリブルで抜こうとした際にディフェンスにコースを止められたら、咄嗟にコースを変えるといったプレーができるようになるのに必要な能力です。
コーディネーショントレーニングは反復してはいけない
コーディネーション能力は、神経回路に刺激を与えることが重要です。普段使わない神経回路を刺激するのがコーディネーショントレーニングですので、反復練習は、目的を達することができません。
同じ神経回路を何度も使用することになるので、幅広く使用しない神経回路に刺激を与えるという目的には合いません。
初めにやったことの動作を練習して神経回路に刺激を与えることができますが、その動作を何度も反復していくうちに刺激がなくなり、コーディネーションとしての効果があまり得られなくなります。コーディネーショントレーニングの最終的な目的は、バスケットボールという競技が要求する以上の運動刺激を選手たちに与えて、彼らの可能性を最大限にすることです。
まとめ
コーディネーションとは、「自分の体を思った通りに動かす能力」のことです。
普段のバスケットボールの練習や試合の中でパフォーマンスを左右する、表には決して表れないものです。
今指導している選手たちは何で困っているのか?キャッチミス、パスミス、判断ミス、などなどそれらはスキルの課題だけでなく、その試合の状況という環境の課題に対して調整するコーディネーション能力が不足しているからかもしれません。
コーディネーションの要素である7つの要素から、選手たちがそれぞれどの要素が長けていて、どの要素が不足しているのか?見極める目を持つことがコーチとして必要なポイントです。
選手一人一人の成熟度も異なるので、その選手に適した練習ドリルを提供して、同じ神経回路を何度も使用する反復をせずに、新しい刺激・環境を与え続けましょう。
ERUTLUC(エルトラック)
株式会社ERUTLUC
「バスケットボールの家庭教師」を運営している会社になります。
2004年に開始したバスケットボールの家庭教師事業は、2019年6月時点でコーチ70名以上、会員数1300名以上。
指導実績多数・各地講習会なども担当しており、「はじめてのミニバスケットボール」「バスケットボール IQ練習本」「バスケットボール判断力を高めるトレーニングブック」「バスケットボールの教科書1~4」など多くの書籍・DVDも監修しています。
【ERUTLUC代表鈴木良和コーチ JBA活動歴】
2016年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2016年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2016年男子日本代表サポートコーチ
2017年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2017年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2017年男子日本代表サポートコーチ
2018年U22日本代表スプリングキャンプアドバイザリーコーチ
2018年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2018年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2018年~2021年男子日本代表サポートコーチ
2021年~女子日本代表アシスタントコーチ