ゼロから始める5アウトオフェンス③
ゼロから始める5アウトオフェンス④
今回はERUTLUC代表の鈴木が市立柏高校女子バスケットボール部向けに行ったクリニック「ゼロから始める5アウトオフェンス」のVol.4の様子をお届けします!
Vol.4は主に「エントリー(ダブルドラッグ・スペインピック)」を紹介しています。
(※こちらの動画は市立柏高校女子バスケットボール部のYouTubeチャンネルにて公開されているものを、特別に許可をいただきSufu内でも公開しています)
市立柏高校女子バスケットボール部のYouTubeチャンネルはこちら
▶︎https://www.youtube.com/c/OrangeSunshines
この記事の目次
①ダブルドラック
オフェンスの入り口(エントリー)として「ダブルドラッグ」が紹介されています。
■ダブルドラッグについて
トランジションの最中にボールマンにスクリーンをかけるアクションをドラッグスクリーンと呼びますが、ダブルドラッグはそのスクリーンを2人にしたアクションのことです。
目的は2つのスクリーンを使うことではなく、チャンスを作ることです。
例えば、1つ目のスクリーンでチャンスが生まれたのであれば、2つ目のスクリーンは必要ないので2人目のスクリーナーは合わせに入ります。また、そもそもスクリーンのユーザーのディフェンスが良い状態でディフェンスをしていないのであれば、1つ目のスクリーンすらかける必要はありません。そのままダイブして合わせに入ればチャンスが生まれます。
ユーザーのディフェンスが強く1つ目のスクリーンを壊されてしまう、あるいは1つ目のスクリーンでスイッチされてそこでミスマッチもできていないので、2つ目のスクリーンをかけてチャンスを取ろうとするのがダブルドラッグの考え方です。
■2つ目のスクリーンをかける選手の判断基準
ここでは2つ目のスクリーンをかける選手の判断基準を紹介しています。
・1つ目のスクリーンに引っかかった場合→バックカットorポップアウト
・1つ目のスクリーンが壊された場合→ピック&ホップ
1つ目のスクリーンに引っかかった場合は、ブレイク1の合わせと同じようにヘルプに出るマークマンディフェンスが高い位置であればバックカット、低い位置であればアウトサイドで合わせるというような感覚を持っていると良いです。
1つ目のスクリーンが壊された場合は、2つ目のスクリーンをかけにいきます。この時、1人目のスクリーナーはピック(ボールマンへのスクリーンのこと)の後にダイブをしているので、2人目のスクリーナーはピックの後にポップアウト(外に広がる動き)をして連動してチャンスを作ります。このようにピックをかけた後に外に広がることを「ピック&ポップ」と呼びます。
■プレー中にチャンスが無いとき
ダブルドラッグからプレーを作っていきますが、チャンスが無い時はハンドオフに入ります。今回のクリニックでは、このような状況の時にハンドオフに加えてセンターがピックにいくというアクションが紹介されています。この場合、ボールマンがハンドオフにいくことがトリガー(きっかけ)になるので、それを見たセンターがすぐにピックに向かえるようにしておきます。このピックが遅れると、ディフェンスがヘルプポジションをとってチャンスを作りづらくなってしまうので、トリガー(今回のクリニックではハンドオフ)を見たら素早くピックに入る必要があります。
ハンドオフに対してディフェンスはアンダー(ディフェンスがスクリーンの下を通って守ること)を選択することが多いので、スクリーナーは空間ではなくアンダーしてきた人にピックをかけます。ユーザーディフェンスはピックの前にハンドオフを対処している分、準備が悪くなっているはずなので、ユーザーはダウンヒルと言って丘を下るような勢いのあるドライブを行いましょう。このような前提に立つと、スクリーナーはダウンヒルを助けられれば良いので、しっかりとスクリーンをかけるよりかはユーザーのディフェンスの邪魔を少しだけしたらすぐにダイブすることを優先します。このダイブにコーナーのディフェンスが寄ってくれたらコーナーのシューターが空きます。ハンドオフ+ピックで、ボールサイドのダイブ&リフトのチャンスを作るか、ダウンヒルに対して逆サイドのヘルプを寄せてブレイク2のチャンスを作るか、どちらも潰されたらハンドオフして次のアクションを作るかを選んでいけると常にチャンスを作ることができます。
②スペインピック
ここではオフェンスリバウンドを取った後の残り14秒でのオフェンスとして「スペインピック」が紹介されています。
■スペインピックについて
通常のピック&ロールに加えてスモールの選手(主に2番などのシューターポジションの選手)が下側からスクリーナーのディフェンスにスクリーンをかけるアクションをスペインピックと呼びます。1人目のスクリーナーはダイブを行い、2人目のスクリーナーはポップアウトでチャンスを作ります。この時、残り2人はコーナーでスペースを空けて待つようにします。
練習としては①のダブルドラッグからコンテイン(ピックに対してスクリーナーディフェンスが下がりながら1人で2人を守ること)に対してポップアウトの選手にパスを出します。そこでチャンスがなかったと想定してハンドオフ+ピックに入り、ユーザーのキックアウトからシュートを打ちます。このオフェンスリバウンドを拾ったら素早くガードがトップでボールを受けてスペインピックに入ります。もちろんプットバック(オフェンスリバウンドを取ってそのままシュートに行くこと)もチャンスになるので、オフェンスリバウンドを拾った時に周りが小さければパスは返さずに自分でシュートに行きましょう。
■2人目のスクリーナーのポイント
2人目のスクリーナーのタイミングが早すぎるとかわされてしまうので、スクリーンの準備をしておきながら1つ目のスクリーンをユーザーが使うタイミングでスッと入りましょう。基本的にはユーザーを助けられるようにスクリーンをかけたいので、ディフェンスが1つ目のスクリーンをスイッチしてきた場合はユーザーがドライブしやすいようにドライブ方向に背中を向けてスクリーンをかけます。ディフェンスがコンテインで守ってきた状況で、ユーザーの方向に下がりながら守ってきた場合はスイッチされた時と同じようにドライブ方向に背中を向けてスクリーンをかけます。スクリーナーの方向に下がりながらコンテインしてきた場合は、ユーザーはすでにチャンスになっているのでスクリーナーのダイブがチャンスになるようにダイブ方向に背中を向けてスクリーンをかけます。
③トランジション1往復
②の流れでダブルドラッグとスペインピックで攻めたら、そこからトランジションで1往復します。
トランジションでは走ってチャンスを狙いますが、守られていたらダブルドラッグに入ります。ダブルドラッグはボールを運んでくる流れで使うので、1つ目のスクリーンの位置を高め(3ポイントラインとハーフラインの間ぐらいの位置)にして、その後の判断するスペースを空けておくようにしましょう。
またピックでドライブがチャンスになった場合は合わせに入るので、合わせの人数(ブレイク1〜3)に応じて動きを選べるようにしましょう。
■アンダーされた場合
スクリーナーはディフェンスがアンダーしそうだなと思ったら、ユーザーディフェンスのやや下側にスクリーンをかけます。そうするとディフェンスとしてはスクリーンをアンダーしにくい角度になるため、ユーザーのチャンスを作ることができます。
またスクリーナーディフェンスがハードショー(ユーザーの方向へ鋭くサイドステップでプレッシャーをかけに出てユーザーディフェンスが戻る時間を稼ぐ守り方)をしてきた場合はすぐにスリップしてチャンスを作ります。このようにスクリーナーの選手は常に判断し続ける必要があります。
■ブリッツ(ダブルチーム)された場合
スペインピックの1つ目のスクリーンでブリッツされた場合はユーザーはピンチですが、スクリーナーのダイブがチャンスになっているので、2人目のスクリーナーはダイバーから離れるように外に広がってユーザーを助ける動きをします。そうすることで、2人目のスクリーナーのディフェンスがダイバーを守った場合は自分がフリーになり、自分についてきた場合はダイバーがフリーになります。またその時にコーナーのディフェンスがダイバーを守ってくることも想定できるので、コーナーの選手はリフトして、ダイブ&リフトの関係を作れるようにしましょう。
ユーザーはブリッツされてもドリブルを続けられるスキルが求められます。ブリッツの時のスクリーナーディフェンスの出方はショーハードと同じなので、基本的にはショーハードを越えるようにドリブルでかわしてパスを捌きます。ショーハードを越えられなかった場合は逆側にターンしてドリブルを続けられるようにします。万が一ドリブルを続けられなかった場合でも、2人に囲まれながらボールを持つのではなく、ピボットアウトでパスコースを確保しながらボールを持つようにしましょう。
ERUTLUC(エルトラック)
株式会社ERUTLUC
「バスケットボールの家庭教師」を運営している会社になります。
2004年に開始したバスケットボールの家庭教師事業は、2019年6月時点でコーチ70名以上、会員数1300名以上。
指導実績多数・各地講習会なども担当しており、「はじめてのミニバスケットボール」「バスケットボール IQ練習本」「バスケットボール判断力を高めるトレーニングブック」「バスケットボールの教科書1~4」など多くの書籍・DVDも監修しています。
【ERUTLUC代表鈴木良和コーチ JBA活動歴】
2016年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2016年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2016年男子日本代表サポートコーチ
2017年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2017年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2017年男子日本代表サポートコーチ
2018年U22日本代表スプリングキャンプアドバイザリーコーチ
2018年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2018年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2018年~2021年男子日本代表サポートコーチ
2021年~女子日本代表アシスタントコーチ