ゼロから始める5アウトオフェンス④
【エルトラックが教える】いい練習とは何か?~練習でフローを作るために~
みなさん、こんにちは。 日々の指導でこんなことを考えることはありませんか?
「どうすればもっといい練習になるか。」
どんなスポーツの指導者な方々もこの答えの無い問いに日々向き合っていることだと思います。
今回は「いい練習」について一緒に考えていきましょう!
この記事の目次
経営の父ドラッカーの言葉
「マネジメントを発明した男」と呼ばれるドラッカーの言葉を参考に「いい練習とは何か?」について考えていきましょう。
仕事を練習に、働く者を選手に置き換えると、「選手が満足していても練習が生産的でなければ失敗であり、練習が生産的であっても選手が生き生きと練習していなければ失敗である。」と言い換えることができると思います。
練習は生産的に行われているか。つまり、【練習によって選手が上手くなっているか?】
【練習に対して選手は生き生きと取り組めているか?】
「いい練習とは何か?」という問いに対して2つの視点を見つけることができました。
選手が生き生きと練習するために
バスケットボールというスポーツの魅力は計り知れず、私たち指導者はバスケの魅力に惹きつけられています。
それは目の前の選手も同じであり、バスケットに夢中になって取り組む選手の選手の姿を日々目にしてると思います。選手が生き生きと練習しているとは、
夢中になってバスケットに取り組んでいる言い換えられるのではないでしょうか。
・ライバルとの競争を楽しむ選手
・自分の目標に対して黙々と取り組む選手
・純粋にバスケットボールが好きでやっている選手
色んな選手がいると思います。どんなことに夢中になるかは選手によって異なるとは思いますが、生き生きとした練習には【選手が夢中になっている】ということが欠かせないと考えられるのではないでしょうか。
主にアメリカで研究生活を送ったミハエル・チクセントミハイ氏の言葉を借りるとすると、
選手が夢中になっているとは、「選手がフロー状態である」と表すことができます。
フロー状態とは何か
フロー状態を一言で表すと、「全集中!」ということです。つまり、今やっていることだけに意識が集中している状態のことを言います。
ミハエル・チクセントミハイ氏が芸術・武術・スポーツスポーツといったあらゆる熟達者へ、「自分の最高の状態をどのように感じたか?」と質問したところ彼らの多くが「流れているように(floating)」と答えたことから最高の状態を「フロー状態」と名付けたそうです。
具体例はこのあとお伝えしますが、スポーツ現場でフロー状態に近づける代表的な例として競争が挙げられます。
競争に面白さを感じるのは「どっちが勝つのか分からない」という未確定さがあるからです。映画を例にするとわかりやすいかもしれません。
2時間の映画を観た際に、もしも結末が冒頭5分でわかってしまったらその後の1時間55分は退屈に感じてしまうと思います。もちろん結末を知っていても何度も見てしまう名作もありますが、、、
フロー状態へ近づける場面の1つとして競争を例にお伝えしました。
フローへ近づいていくのに重要になるのは「どっちが勝つの!?」というハラハラ・ドキドキという心の動きなのです。
どのような時、フロー状態に?
先ほどは、フロー状態へ近づくための1つの要素として競争場面での心の動きをご紹介しました。
他にはどんな場面があるのでしょうか?
ミハエル・チクセントミハイ氏は
「目標を選び、注意を集中の限界まで自己を自己を投射する時、我々が行うものは全て楽しいものになる」と言っています。
ここで新しいキーワードを1つご紹介します。それは「再近接発達領域」という言葉です。
選手目線の言葉に置き換えると「少し頑張ればできそうな目標」「できたり、できなかったりする課題」ということです。
こういった目標や課題を達成するためには、選手は自分の集中を目標・課題へ向ける必要があります。
選手が生き生きと練習するために、選手が夢中になるために
私たち指導者は日々の練習の中にどれだけこの「最近接発達領域の課題」を提示できるかが 重要になると考えられます。
しかしながら、先ほどにもあったように選手がどんなことに夢中になるかはそれぞれ違いますし、ましてやチームで練習することが多い中で選手一人ひとりに最も適した課題を準備するということは、非常に難しい問題だと思います。
ここでフロー状態を表す図を見てみましょう。
フローには幅があるということっに注目すると、この問題に関して一筋の光が見えてくるかもしれません。
フローの幅に目を向けてみる
ここでは、「日々の練習の中で、選手それぞれに適した課題を提供するにはどうすれば良いか」を考えてみましょう。
つい先程、フロー状態には、幅があるということを確認しました。
これが意味することは選手の能力に対して。少し難しい課題、少し簡単な課題でもフロー状態になりうるということを意味しています。
そしてこの少し難しい・少し簡単という幅が我々指導者に力を貸してくれます。
シュートの練習を例に、具体的なフローへ近づいていける方法についてご紹介していきます。
〈実践編①〉シュート練習を例に
最後に、シュートの練習を例として、選手へ最適な課題を届ける方法についてお伝えさせて頂きます。
ここでは大きく2つの方法をご紹介します。
①基準(目標)を示し、その達成を目指す
②選手自らが自分で自分で目標を決めて取り組む取り組む
①基準(目標)を示し、その達成を目指す。
これは指導者が課題を準備するものになります。
例えば4本打って3本決めるという大きな方向性を示したり、5本打って4本in or 3本in と選手のレベルに応じて設定するのもいいでしょう。
具体的に数字を設定することで選手の選手の心に火がつきます。
何よりも選手が頑張ればなんとか達成できるという絶妙な塩梅が重要になります。
他の取り組み方として◯本決めたら教えて!と全体で競争する方法もあります。競争したい!という思いが強い選手におすすめな方法です。
2年生〜6年生と学年の幅が広いという場合、オススメなのが学年ごとに目標を設定することです。
2年生は3本 3&4年生は4本 5&6年生は5本
このたった1本の差が時に選手の心に大きな火をつけることもあります。
いくつかご紹介させて頂きました。ここで私たち指導者が気をつけなければいけないのは競争することが目的ではないということです。
勝ったから素晴らしい、優れているということではありません。負けたからダメ、劣っているということでもありません。
子ども達は純粋が故に勘違いをしてしまうこともあるでしょう。
選手も指導者も常に「なぜ、競争するのか?」という目的を見失わないよう気をつける必要があります。
競争することは選手のベストを引き出すため、生き生きと練習に取り組むための1つの手段でしかありません。
②選手自らが自分で自分で目標を決めて取り組む取り組む。
こちらは選手1人ひとりに柔軟に対応することができることがオススメです。目標の設定の仕方はいろいろあると思います。
・確率を目標にする
・シュートの決め方にこだわる
・シュートの距離を毎回変える
考えればどんどん出てくると思います。
思い出してみると、
選手が何に夢中になるかは人によって異な理、課題は1人ひとり異なるはずです。
自分で目標を決めることで自分の課題へ目を向ける機会になるのではないでしょうか。
もちろん自分で課題を見つけること、目標を決めることは決して簡単なことではないと思います。
しかしながら、「指導者からの課題」よりも「自分で見つけた課題」の方が「達成したい!!!」という情熱は強いのではにでしょうか。
指導者や仲間から心に火をつけてもらうだけでなく、自分で心に火をつけることを身につけられる方法ではないかと考えています。
まとめ
今回は「いい練習とは何か?」という問いに向き合う回となりました。
インターネットの発展により少し前はアクセスすることもできなかった情報が簡単に手に入る時代になりました。
どんな練習があるか?ということが溢れてる時代と言い換えることもできるかもしれません。練習の中身が潤う時代がやってきた今、
我々指導者に求められるのは、
「目の前の選手にとって何が最適かを見極めること」「選手がイキイキと練習できる環境を整えること」かもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
読んでいただいた皆さんの力になりましたら幸いです、
最後に20世紀最高なコーチと言われるジョン・ウッデンコーチの言葉で終わります。
ERUTLUC(エルトラック)
株式会社ERUTLUC
「バスケットボールの家庭教師」を運営している会社になります。
2004年に開始したバスケットボールの家庭教師事業は、2019年6月時点でコーチ70名以上、会員数1300名以上。
指導実績多数・各地講習会なども担当しており、「はじめてのミニバスケットボール」「バスケットボール IQ練習本」「バスケットボール判断力を高めるトレーニングブック」「バスケットボールの教科書1~4」など多くの書籍・DVDも監修しています。
【ERUTLUC代表鈴木良和コーチ JBA活動歴】
2016年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2016年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2016年男子日本代表サポートコーチ
2017年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2017年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2017年男子日本代表サポートコーチ
2018年U22日本代表スプリングキャンプアドバイザリーコーチ
2018年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2018年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2018年~2021年男子日本代表サポートコーチ
2021年~女子日本代表アシスタントコーチ