【エルトラックが教える】アドバンススタッツ②

【エルトラックが教える】アドバンススタッツ②

ERUTLUC(エルトラック)

今回はバスケットボールにおける「アドバンススタッツ」解説の第2弾です!
前回の記事では、アドバンススタッツの基本となる「PPP(Points Per Possession)」と「得点期待値」について解説していきました。
今回はそこからもう少し掘り下げて、オフェンスを評価するための代表的なスタッツである「4ファクター」についてご紹介していきたいと思います。

4ファクターとは?

「4ファクター」とはディーン・オリバー氏が提唱したオフェンスを評価する4つの指標です。
・シュート
・ターンオーバー
・リバウンド
・フリースロー
オリバー氏はこの4つがオフェンスを評価することにおいて重要な要素だと考えました。



オフェンスが終わる際には必ずこの4つのうちのどれかを行います。正確に言えばオフェンスが終わるのはシュート、ターンオーバー、フリースローの3つのうちのどれかです。ただし、シュートが外れた場合はリバウンド争いが起こります。「リバウンドを制するものはゲームを制す」という言葉があるように、ポゼッション数を左右するリバウンドに関しても分析をすることが重要だということです。
それぞれの効率を分析することができれば、オフェンスが効率的に行えているかを知ることができ、どこを改善していけば勝利に近づくかを考える材料になります。

シュートを分析するスタッツ「eFG%」

まず初めにシュートを分析するスタッツからご紹介します。
シュートは「eFG%」(エフェクティブフィールドゴールパーセンテージ)と呼ばれるスタッツを使います。計算式は以下の通りです。


eFG% = (FGM + 0.5 × 3PM) ÷ FGA

 

FGM:フィールドゴール成功数
FGA:フィールドゴール試投数
3PM:3ポイント成功数


このスタッツはシュートの確率を表していますが、3ポイントは1本決めたら3点分入るので、その付加価値も足された計算式になっています。


例を挙げて解説していきます。A選手は試合で10本シュートを打ち、5本のレイアップを決めて10得点をあげました。B選手も同じく10本シュートを打ち、2本の3ポイントと2本のレイアップを決めて10得点をあげました。この場合、得点数は同じですが、シュート確率はA選手が50%でB選手が40%となり両者に差が出てしまいます。10本打って10得点したのは同じなのに、シュート確率だけ見るとA選手の方が優れていることになってしまいます。
ここでeFG%の登場です。
両者のスタッツを先ほどの計算式に当てはめてみましょう。


A選手:(FGM 5本 + 0.5 × 3PM 0本) ÷ FGA 10本 = 50%


B選手:(FGM 4本 + 0.5 × 3PM 2本) ÷ FGA 10本 = 50%


ということで両者とも50%となりました。このように3ポイントを1本決めたら3点入るということも加味してシュート確率を出してくれるのがeFG%ということです。
この数値が高ければ高いほど効率よくシュートを決めれているということになります。

ターンオーバーを分析するスタッツ「TO%」

続いてターンオーバーを分析するスタッツです。こちらは「TO%」(ターンオーバーパーセンテージ)というスタッツを使用します。計算式は以下の通りです。



TO% = TO ÷ (FGA + (0.44×FTA) + TO)


FGA:フィールドゴール試投数
FTA:フリースロー試投数
TO:ターンオーバー数


このスタッツは全ポゼッションのうちターンオーバーで終わった割合を示すものです。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、後半の式は前回ご紹介したポゼッションの求め方と同じです。つまりターンオーバー数をポゼッション数で割ったものがTO%ということです。
ターンオーバーで終わるということは得点の可能性が0%であるということだけでなく、相手のトランジションのチャンスになってしまう可能性も高いです。いかにオフェンスをターンオーバーで終わらせずにシュートまで持っていくかが大切です。
この数値が低い方がターンオーバーの割合が少なく、シュートで終われているオフェンスが多いということになります。

リバウンドを分析するスタッツ「ORB%」

3つ目はリバウンドを分析する「ORB%」(オフェンシブリバウンドパーセンテージ)というスタッツをご紹介します。計算式は以下の通りです。



ORB% = ORB ÷ (ORB + 相手チームのDRB)



ORB:オフェンスリバウンド数
DRB:ディフェンスリバウンド数
 

このスタッツは自分たちがシュートを外した時にどのぐらいの割合でオフェンスリバウンドを取れているかを表しています。
自分たちがシュートを外した場合は、オフェンスリバウンドを獲得できるか相手にディフェンスリバウンドを取られるかのどちらかしかありません。シュートが外れた時にオフェンスリバウンドを取ることができれば、自分たちのシュートチャンスを増やすことができるだけでなく、相手のトランジションオフェンスを抑えることができます。シュートを100%で決めることは不可能なので外れた時にいかにオフェンスリバウンドを取るかということもオフェンスにおいて重要な要素になります。
この数値が高いほど自分たちがシュートを外した時にオフェンスリバウンドを取れているということになります。

フリースローを分析するスタッツ「FTR」

最後はフリースローを分析するスタッツです。「FTR」(フリースローレイト)というスタッツを使います。計算式は以下の通りです。



FTR = FTA ÷ FGA
 


FTA:フリースロー試投数
FGA:フィールドゴール試投数


このスタッツはフリースローの獲得率を表しています。ディーン・オリバー氏はフリースローの成功率よりも獲得率の方が勝利にとって重要な指標であると考えました。
フリースローの時は時計が止まって陣形を整えることができるので、相手のトランジションオフェンスを防ぐことができたり、オールコートディフェンスに入りやすくなります。またフリースローを獲得できているということは相手がファウルをしているということになります。もちろん確率が高いに越したことはありませんが、4ファクターの1つとしては獲得率の方を重視しているということです。
この数値が高いほどより高い頻度でフリースローを獲得できているということになります。

4ファクターを使ってオフェンスを分析する

実際にスタッツを使って分析する際にこの4ファクターは大いに役に立ちます。ベーシックスタッツのみで分析しようとすると数字が多すぎて、どこをどう分析すれば良いのか、どこがネックになっているのかがわかりづらくなります。
まずは4ファクターの数字を見てその中で気になるスタッツをさらに深掘りして見たり、ポイントを絞って映像を見ていけば、頭を整理しながら分析することができます。



例えば、eFG%が低い場合は2Pと3Pの割合を調べてみたり、得点期待値を出してみたりして改善ポイントを出していくと良いでしょう。ターンオーバーが多い場合はパスミスが多いのかトラベリングが多いのかなど最も多いターンオーバーを調べてそれに取り組んでみても良いと思います。
 

このようにまずは4ファクターから分析に入ることで、効率良く改善ポイントにたどり着くことができるのです。
基本的にアドバンススタッツはベーシックスタッツを計算式に当てはめれば簡単に割り出せるので、前回のPPPや今回ご紹介した4ファクターの計算式をエクセルなどで作っておくと良いと思います。

まとめ

今回はアドバンススタッツの中のオフェンスを評価する指標となる4ファクターについてご紹介してきました。


前回のまとめでも述べましたが、コーチが試合を見た印象と数字上の結果が異なることはよくあります。流れや雰囲気など数字で全てを表すことはできませんから、コーチの主観と数字の両方から試合を分析していくことが重要です。


そのとっかかりとして4ファクターは分析を分かりやすく、かつ効率的にしてくれるものだと思いますので、是非チームの評価スタッツの中に取り入れて活用してみてください。

ERUTLUC(エルトラック)

株式会社ERUTLUC
「バスケットボールの家庭教師」を運営している会社になります。

2004年に開始したバスケットボールの家庭教師事業は、2019年6月時点でコーチ70名以上、会員数1300名以上。
指導実績多数・各地講習会なども担当しており、「はじめてのミニバスケットボール」「バスケットボール IQ練習本」「バスケットボール判断力を高めるトレーニングブック」「バスケットボールの教科書1~4」など多くの書籍・DVDも監修しています。

【ERUTLUC代表鈴木良和コーチ JBA活動歴】
2016年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2016年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2016年男子日本代表サポートコーチ
2017年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2017年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2017年男子日本代表サポートコーチ
2018年U22日本代表スプリングキャンプアドバイザリーコーチ
2018年U12ナショナルキャンプヘッドコーチ
2018年U13ナショナルキャンプヘッドコーチ
2018年~2021年男子日本代表サポートコーチ
2021年~女子日本代表アシスタントコーチ

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